AIを「仕事を奪う脅威」と捉えるか、「新しい価値を生み出すパートナー」と捉えるか

時代が目まぐるしく変わる中で、AIを「仕事を奪う脅威」と捉えるか、「新しい価値を生み出すパートナー」と捉えるかで、人の働き方は大きく変わる。元毎日新聞記者で、現在はライター・カメラマン、そしてKindle出版プロデューサーとして活動する根本毅さんは、まさに後者を体現する人物だ。

現在、根本さんが精力的に取り組んでいるのが「100人インタビュー」というプロジェクトである。30分ほどの対話を通じてその人の経験や思いを引き出し、AIを活用して直後にスライド形式の資料にまとめ上げるというこの取り組みは、体験者から「強烈に感動した」「自分のことがよく分かった」と口コミで広がりを見せている。

新聞記者としての確かな取材力と、最新のAI技術を掛け合わせた根本さんの活動は、単なる情報整理にとどまらない。その根底にあるのは、一人ひとりの人生に光を当て、社会に循環させていくという、まさに「つなぎ道」の実践だと感じました。その人の原体験が分かると、自然と人とつながっていくことができます。

項目内容
氏名根本毅さん
主要な活動領域ライター、カメラマン、Kindle出版プロデューサー、「100人インタビュー」プロジェクト
キーワード100人インタビュー、AI活用、取材力、人生の素材、Kindle出版
記事の主題新聞記者時代の経験とAIを掛け合わせ、人の思いや経験を「素材」として引き出す実践

AIに任せられること、人間にしかできないこと

根本さんが「100人インタビュー」を始めたきっかけは、生成AIの進化に対する率直な気づきからだった。「文章を書くのがそんなに得意なわけではない」と語る根本さんは、AIが文章を高い精度で書けるようになった今、自分の仕事の価値はどこにあるのかを問い直したという。

「自分がやってきた仕事を細分化してみたんです。取材をして話を聞く、録音を文字起こしする、原稿を書く、納品する。このうち、文章を書くことや文字起こしはAIに任せられる。だけど、人と人から話を聞くっていうのは、やっぱり人間じゃないとできないと思ったんです」

AIが質問して取材をする時代が来るかもしれない。しかし、人間同士の対話だからこそ引き出せる熱量やニュアンスがある。根本さんは、その「人から話を聞き出す」という部分に自らの存在意義を見出した。

経験や思いを「外に取り出す」という仕事

世の中には、豊かな経験や強い思いを持っている人がたくさんいる。しかし、それは本人が言葉にして外に出さない限り、誰にも伝わらない。

「そういう経験や知識は、他の人の役に立つし、人を動かす力を持っています。インタビューというのは、その人の中にあるものを外に引き出して、言葉という形を与える仕事だと思うんです」

根本さんは、引き出した言葉を「肉や野菜のような料理の素材」に例える。素材さえあれば、あとはAIという「万能調理器」を使って、和食にもイタリアンにも加工できる。ブログ記事、SNSの投稿、あるいはKindle出版という形にすることも可能だ。だからこそ、彼は「その方の中にある経験や思いを、素材として外に取り出す作業に特化すればいい」と考えたのである。

新聞記者時代の「理解するまで聞く」姿勢

短時間のインタビューで、なぜそれほどまでに深い内容を引き出せるのか。その秘訣は、新聞記者時代に培われた「相手の話に関心を持つ」という基本姿勢と、「自分が理解するまで聞く」という徹底したスタンスにある。

「一番大事なのは、相手の話に関心を持つこと。つまんなそうな顔をしていたら、話す気なくすじゃないですか。それから、新聞記者の時は、自分が理解しないまま書いた記事は、読者も理解できるわけがないので、理解するまで聞いていました」

100人インタビューでは、特に「子どもの頃どうだったか」を聞くことを大切にしているという。過去から現在、そして未来へと時系列で話を聞くことで、その人の人生の物語や価値観の源泉が自然と浮かび上がってくる。それが、AIに質の高い「素材」を渡すための重要なプロセスとなっているのだ。

マスコミが注目しない「普通の人」の物語

新聞記者時代の取材対象は、ニュース性や社会性を持つ「ある意味で特殊な人々」だった。しかし、100人インタビューを通じて、根本さんは「普通の人々」の面白さに気づかされたという。

「そういう条件なしでいろんな方の話を聞いていると、めっちゃ面白いんですよ。マスコミが注目するレベルじゃなくても、日々の生活の中にその人の物語があるんです」

インタビューを受け、自分の人生が可視化されたスライドを見た人は、深い気づきを得て、次の一歩を踏み出す勇気をもらう。根本さんの活動は、単なるヒアリングではなく、その人の人生の価値を再発見させる「ギフト」のようなものだ。

「誰かに自分を紹介したい、うまく説明したい人は、これを受けたらすごいパワフルになりますよね」と語るように、この100人インタビューは、人と人とをつなぐための最強の自己紹介ツールにもなり得る。

AIという最新のテクノロジーを使いこなしながらも、その中心にあるのは「人への深い関心」と「対話の力」である。根本毅さんの挑戦は、これからも多くの人の人生を言葉にし、新たな縁をつないでいくことだろう。

#16 根本毅 |根本毅 100人インタビューで引き出す「人生の素材」——元新聞記者が実践する、AI時代の新しい「つなぎ道」
ことのはラボラトリー 代表 Kindle出版プロデューサー / ライター
神奈川県出身、京都大学大学院理学研究科(分子生物学)を修了後、1997年に毎日新聞社に入社。科学環境部や社会部などで、医療、災害、防災、原発、科学研究分野を中心に取材・執筆を行い、支局デスクや本社デスクも経験。2020年に早期退職し、現在はライター業と並行してKindle出版プロデューサーとして活動中。座右の銘は『行動すれば、人生は変わる』。
https://www.facebook.com/takeshi.nemoto
https://www.instagram.com/inuotto

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