原直之|手放した先に見えた景色。FIRE状態の経営者が「つなぎ道」の実践者になるまで

飲み歩いているだけなのに、出会った人の人生が動き出す。その理由を、3人の対話から読み解く

「いま何をやっている人なんですかって言われたら、本当に毎日飲み歩いているただの遊び人ですっていうような感じで活動してます」。株式会社フィールド代表・原直之さんは、自分自身をそう紹介して笑います。けれどもこの対談を見ていると、その言葉の裏側にある厚みに気づかされます。ゲーム業界のバブルに乗って雇われ社長としてスタートし、バブルが弾けたあとは株主との軋轢を抱えながら会社を買い取り、借金を背負い、縮小するマーケットの中で必死にもがいてきた人。その人が、いまは「やりたくないことは一切やらない」と決めて、ただ人と会い、飲み、つなぐことだけをしている。

今回の対談は、つなぎ道の佐藤孝治と、「ギフトに生きる」を実践する石丸弘さんの3人で行われました。場所は明治神宮の森のCAFÉ「杜のテラス2nd」。3人が同じ場所に揃うのは実に3年以上ぶりだったといいます。そもそもこの3人の関係自体が、原さんの「つなぎ」によって生まれたものでした。佐藤と石丸さんの出会いは、原さんが「石丸さんっていう面白い人がいるから一緒に行こう」と声をかけたことがきっかけです。つまり今回の対談は、つないでくれた人に「ありがとう」を言いに行く回でもあったのです。

この記事では、対談の中で語られた原さんの生き方、つなぎ方の哲学、そしてそこから生まれた「つなぎ道Party 2026」の画期的なアイデアまでを、できるだけ丁寧にお伝えしていきます。動画で見ると、3人の空気感や笑い声、間合いの温かさがさらに伝わりますので、ぜひ合わせてご覧ください。

雇われ社長、借金、離婚。すべてを手放した先にあった「FIRE」という気づき

原さんのキャリアは、華やかなスタートから始まっています。iPhoneの登場とともにゲーム業界が急成長していた時代、雇われの形で会社を立ち上げ、その波に乗って事業は順調に拡大しました。しかしバブルはいつか終わるもの。マーケットが縮小し始めると、株主からのプレッシャーが強まり、原さんは会社を自分で買い取る決断をします。借金を負い、自分の形を作ったものの、業界の縮小は止まらない。「この先がない」という状態でコロナがやってきた。

けれども蓋を開けてみると、原さんの状態は「実質FIRE」だったのです。全く労働はしていないけれど収入はある。仕事をやってくれるパートナーたちが仕組みとして動いている。入金確認と請求書の発行くらいしかやることがない。それなのに原さんは、その状態を「いかに続けられるか」というメンテナンスに全力を注ぎ、やりたくもない営業活動や採用を続けていたといいます。

転機が訪れたのは去年の夏。「ファイヤーしてるんだから、ファイヤーを楽しもう」と気づいた瞬間でした。それ以降、既存の事業にはノータッチ。やりたいことだけをやる。その「やりたいこと」が、人と会い、飲み、つなぐことだったのです。

時期原さんの状態心境
ゲーム業界バブル期雇われ社長として事業を拡大波に乗って順調に進む
バブル崩壊後会社を借金で買い取り、自分の形を模索株主との軋轢、縮小するマーケットへの焦り
コロナ期実質FIRE状態だが気づかず、維持に奔走やりたくないことを続ける苦しさ
去年の夏以降「楽しもう」と決断、やりたいことだけに集中毎日飲み歩く「遊び人」として軽やかに生きる

離婚してすべてを手放し、独り身になったことも大きかったと原さんは語ります。「失うものはないし、安心して自分勝手なことができる。わがままに生きられる状態を作り出したからできている」。そして「そういう意味では本当に元嫁にも家族にも感謝だなと思って」と付け加える。この言葉に、原さんの人柄がにじみ出ています。手放したことを恨むのではなく、手放せたことに感謝する。その姿勢が、彼の「つなぎ」の軽やかさの源泉になっているのだと感じました。

「リマインドつなぎ道」という発明。すでに出会っている人同士を、いま必要なタイミングで再びつなぐ

対談の中で佐藤が「リマインドつなぎ道」と名付けた行為があります。これは、すでに面識のある人同士が疎遠になっているとき、「いま会ったほうがいいですよ」と再び引き合わせることです。原さんは、まさにこの「リマインドつなぎ道」の達人でした。

佐藤と原さんの再会のきっかけも、本田泰成さんと新宿で話していたときに「この辺りに原直さんのオフィスがあるよ」と言われて訪ねたことだったといいます。当時、佐藤は事業の倒産を経験し、自己破産して生活保護を受けていた時期。原さんは、そんな佐藤を「素晴らしいんだ」とずっと応援し続けていたのです。

そして原さんは、落ち込んでいた佐藤に「石丸さんっていう面白い人がいるから一緒に行こう」と声をかけます。当時、佐藤は家を探さなければならない状況で、石丸さんは部屋を開放している人。原さんの中では「住む場所の問題が解決するかもしれない」という思いがあったようですが、実際に起きたのは別のギフトでした。佐藤は石丸さんの家に行くことで心が癒され、新しい人間関係が生まれていったのです。

原さんはこの現象について、こう語っています。「つなぎ道的に僕らが『これでつないだらいい』って思ってつなぐけど、全然違うところのギフトが起こるっていうのは結構あるある。なんかそれは楽しめて面白いなっていうのは思う」。意図した結果とは違う場所で価値が生まれる。それを楽しめるかどうかが、つなぐ人の器なのかもしれません。

さらに面白いのは、この3人のつながりが「循環」していることです。石丸さんが原さんに「泰ちゃん」という人物を紹介し、泰ちゃんが佐藤に原さんをリマインドつなぎして、その流れの中で佐藤と原さんが再会する。石丸さんは「泰ちゃんに投げたら回って僕に来る」と表現しました。佐藤も「こんな短距離で循環するの珍しい」と驚いていましたが、これは偶然ではなく、同じ心の周波数を持つ人たちのクラスターだからこそ起きる現象なのでしょう。

頭の中のデータベースと「料理」のような人の組み合わせ方

原さんに「人と人をつなぐときに意識していることはありますか」と聞くと、とても具体的な答えが返ってきました。

「全くゼロベースで誰と誰と誰を呼ぼうっていうのは結構苦手なタイプ。まずベースの材料があるから、Aさんっていう材料がいるから、この人にこういう料理をしてもらおうっていうBさんが現れて、っていう風な組み合わせになってくる」。

つまり、原さんのつなぎ方は「料理」に近いのです。ご飯が炊けたから味噌汁を合わせよう。味噌汁とご飯があるなら、もう一品おかずを足そう。メインディッシュが決まったら、ワインはこれがいい。そういう感覚で、人と人の相性を見ながら場を組み立てていく。

そして原さんの頭の中には、独自の「データベース」があるといいます。「この人とこの人の相性がいいか、この人との相性が良くないか。あとはこの人がどういうものが好きで、どういうお酒が好きかっていうデータベースぐらいしかなくて。それを頭の中に持ってるから、なんかあったときにこの人とこの人合わせたいっていうのが出てくる」。

つなぎの要素原さんのやり方
起点まず「Aさん」という素材がある。ゼロベースでは考えない
組み合わせ相性のデータベースを参照し、料理のように素材を合わせる
避けるべきこと「この人とこの人は絶対合わせちゃいけない」という判断もする
相性が悪い人が来たがるとき「ちょっと満員なんで」とシンプルに断る
事前情報の扱い名刺交換や肩書きから入らない。まず乾杯して場を温める

特に興味深かったのは、つなぎ方が「進化」しているという話です。以前は「この人がこのビジネスをやっていて、この人がこのビジネスをやっているから、つないだらシナジーが生まれるんじゃないか」と頭で考えていた。けれどもいまは違う。「この人お酒好きだし、この人もお酒好きだから、なんか面白そうだから会わせちゃおう」。仕事の話すら聞かない。純粋に「面白そうかどうか」だけで人を判断する。

原さんはこの変化を「第三世代から第四世代、第五世代への進化」と表現しました。頭で考えるつなぎから、直感で感じるつなぎへ。ワクワクする感覚だけを信じて人を引き合わせると、予想もしなかった化学反応が起きる。「初めから狙っちゃうと、そのねらい通りにしかならない。でも感覚でつなぐと、意外なところですごいシナジーが起こる」。この言葉は、つなぎ道の本質を射抜いているように思えます。

名刺交換から始まらない場づくり。「まず乾杯して、場が温まってから」

原さんの場づくりの哲学は、世の中のビジネス交流会とは正反対です。「最初に名刺交換をする会が本当に苦手なんですよ。そこから入っちゃうと、その人を見なくなっちゃう。タグで見ちゃうから」。

名刺に書かれた肩書きや会社名は、その人を理解するための情報のように見えて、実は「タグ」として人を固定してしまう。原さんは、そのタグを一切排除した状態で人と出会うことを大切にしています。事前に「こういう人が来るよ」という情報すら共有しない。「構えちゃう」からです。

では、名刺交換から始まらないとしたら、どうやって場を開くのか。原さんの答えはシンプルでした。「まず一旦乾杯して、ある程度場が温まった後に、そういえばちょっと自己紹介やりますかみたいな。やってもやらなくてもいいくらいの」。自己紹介も一言でいい。2分以上話されたら正直聞いていない。10人いたら最初の1人の自己紹介すら覚えていない。だからこそ、「このビール美味しいね」「こういうの好きなんですね」という、ナチュラルな会話からスタートするほうがいいのだと。

原さんが自分の場所(表参道サロン)を持っていることも、この場づくりを可能にしている要因です。「人の場所で勝手にやると『勝手に呼ぶなよ』って言われるパターンもあるんで。自分の場所だからできちゃう」。そして、自分が素晴らしいと思ったイベントや飲み会があれば、Facebookで「行く人いたら行く?」と声をかけ、4〜5人を連れていく。主宰者にとっても嬉しいし、連れていった人同士の間にも新しい縁が生まれる。佐藤はこれを「つなぎ道の奥義」と呼んでいました。

「ありがとうゲーム」という発明。奪い合いを与え合いに変えるパーティーの設計

対談の後半で、5月16日に開催予定の「つなぎ道Party 2026」の企画が話題になりました。佐藤が「2時間の立食パーティーをどう設計するか」と悩んでいたところに、原さんが温めていたアイデアを惜しみなくギフトしたのです。

原さんの問題意識はこうでした。「世の中のビジネス交流会って、ほとんど奪い合い。みんなが自分の商品を売りたい、宣伝したいって集まってくるから、殴り合いになる。だったら、奪い合いじゃなくて与え合いのゲームにすればいい」。

具体的には、漫画『カイジ』の「限定じゃんけん」をヒントにした仕組みです。参加者全員に番号付きのシール(星)を配る。会場で出会い、「この人面白い」「また会いたい」と感じた相手に、自分のシールを渡す。シールは奪うことができず、与えることしかできない。たくさんシールを集めた人は、それだけ多くの人から「あなたに会えてよかった」と思われた証になる。

一般的な交流会原さんが提案した「ありがとうゲーム」
名刺を配り、自分を売り込むシール(星)を渡し、相手への感謝を表現する
奪い合い(テイカーの集まり)与え合い(ギフトの循環)
結果:誰が何を売っているかだけが記憶に残る結果:誰が魅力的だったかが可視化される
終了後のつながりは名刺の山終了後のつながりは「あなたのシールをもらった」という温かい記憶

佐藤はこのアイデアに興奮し、その場でオペレーションの具体化が始まりました。番号シールを使えば準備も簡単。途中経過を会場内で見られるようにすれば、ゲーム性も高まる。トップだけを発表すれば、シールをもらえなかった人の寂しさもケアできる。石丸さんも「感謝しか生まれない仕組み」だと絶賛していました。

原さんはこのアイデアを「ありがとうゲーム」と呼んでいます。まだ実際に運用したことはなく、温めていたものをこの場でギフトしてくれたのです。「世の中に役に立つことをやらないって最近決めたんですよ」と笑う原さんが、結果として最も「役に立つ」アイデアを生み出している。この逆説こそが、原直之という人の面白さなのだと思います。

つないだ人が自分を超えていくとき。嫉妬ではなく「フラットに喜べる」ための条件

対談の中で、とても深いテーマが語られた場面がありました。自分が紹介した人同士がビジネスで大成功を収め、紹介者である自分を追い越していったとき、どう感じるのか。原さんは率直に「結構あるなと思って」と認めた上で、こう語りました。

「自分自身も日々程よい成長をして、自分の人生を豊かに楽しんでいれば、相手がどれだけ大金持ちになっても、フラットに喋れる。成長の方向性が、その人を目指すんじゃないっていうのが結構ポイントかもしれない」。

石丸さんもこの話に共鳴し、「受け取る側の姿勢としては、自分の傷を癒したり、自分の未熟さとちゃんと向き合うことが大事」と補足しました。紹介した人が先に行ってしまって悔しい、悲しいという感情があるなら、それを友達に話して、ちゃんと感情を出す。そうすると穏やかになって、「よかったな」と思えるようになる。

この会話は、つなぎ道の実践者にとって避けて通れないテーマです。人をつなげば、つないだ先で予想もしなかった成功が生まれることがある。そのとき、つないだ自分は何も変わっていない。その落差をどう受け止めるか。原さんの答えは、「比較しない」「自分は自分の人生を楽しむ」というシンプルなものでした。そしてそれは、FIREを達成しながらも「遊び人」として軽やかに生きる、いまの原さんの生き方そのものなのです。

「ギフトに生きる」と「つなぎ道」が、この人の中で自然に重なっている

対談の最後、石丸さんは「この場がギフトでしかない」と語りました。3人が会えていること自体が奇跡であり、出てきたアイデアやこれからの未来も含めて「すごく豊かだった」と。そして「2人がお互いをすごく愛してる、信頼してる感じがキュンだった」とも。

原さんは「正直何を話したか全然覚えてないんで」と笑いながら、「流れるように生きてるので、今日は楽しかったです」と締めくくりました。考えてきたことは話せなかったけれど、それでいい。流れに身を任せて、目の前の人との時間を楽しむ。それが原直之さんの生き方であり、つなぎ方なのです。

佐藤は「ギフトに生きると、つなぎ道がシンクロしているんだなということの確信度がさらに高まった」と語りました。原さんは、「ギフトに生きる」を理論として語る人ではありません。けれども、人と会い、場を開き、面白そうな人同士を引き合わせ、その結果を手放す。その一連の行為が、まさにギフトそのものであり、つなぎ道の実践そのものになっている。意識せずに体現しているからこそ、その存在感は軽やかで、温かいのです。

これからの原さんには「種がいっぱいある」といいます。まだ具体的に言える段階のものはないけれど、「楽しく生きてます。それだけは間違いない」。1年後、2年後にまた話を聞いたとき、すごくうまくいっていても、うまくいっていなくても、きっと原さんは楽しそうに話してくれるでしょう。その姿を見届けることもまた、つなぎ道の楽しみのひとつです。

#12 原₆ 直之₃ |はらちょく。代表取締役 遊び人 兼、北参道サロン オーナー 遊び人

遊び人の一人社長(株式会社フィールド)。お酒のヒミツ基地、北参道ベースを運営。バツイチ独身の歩くパワースポット。ただの呑兵衛。自称フライドポテト研究家。日本酒を減らす会会長。最近はワインも勉強中のパリピです。神社lover。実態は、美味しい酒や楽しい宴を求めて、日本全国津々浦々、フットワーク軽く呑み歩く、ただの自遊人。

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